ブログを始めるきっかけをくれた君の話
「独身」「アラサー」「女」
別々に聞いたら特になんとも思わない単語を繋げると、なぜこうも悲哀に満ちるのか。
世間的に自虐的な言葉として使われるが、「独身」も「アラサー」も「女」も私は好きだ。
30代になり、自由が利くことが増え、とても楽しい毎日を送っている。強がりではない。
しかし、こんな冬の寒い日には、ふと松坂桃李に30万支払ってでも添い寝していただいて眠りに落ちたいと思うこともある。
私はこの街に21年4月に転勤で越してきた。
元来、人に恵まれるタイプの私はこの街でも例外ではなく、見慣れない私に話しかけてくれたり、餌を与えてくれたり、職場の人はとても良くしてくれる。5キロ太ってしまった。
引越ししてきてから気がつけばもうすぐ1年。
何が変わったのだろう。
部屋がただただ快適になるばかりで、より外に出なくなった気もする。
イケおじのような男前空間に浸りながら、ゲーム実況動画を見て、ハイボールを飲んでいる。
悪くない。凄く心地よい。いや、これでよいのか。
恋愛がしたくないわけではない。
しかし、トラウマがないわけでもない。
若気の至りの失敗や、墓場まで持って行くと決めていることもある。
私はいつしか自分から人を恋愛対象として好きになれなくなっていた。
自分から好きになることが出来たらどんなに楽だろう。
そんな折、マッチングアプリなるものを入れた。
このブログを始めたのと同じ、単なる「勢い」だ。
「出会いがないのか？」と言われることも多々あるが全くない訳では無い。むしろ、男性に囲まれて仕事をしている。違うフロアにはもっと沢山の男性がいると思われるが、このご時世もあり、関わることはほぼ無い。
私のスペック
31歳、独身、女、地方、会社員(転勤あり)
煮込みすぎた成海璃子似(諸説あり)
50代以上に異様にモテる(困る)
好きなタイプは松坂桃李
好きなお酒はビールとハイボール
理屈っぽいところが玉に瑕☆
こんなやつにも反応を示してくれる方がおり、開始3週間現在で360人の方から「いいね！」をいただいている。
偉大なる先人たちの助言からある程度のマニュアルは存在すると思う。
その中に、複数人と同時進行は当たり前、というものがあるが、私はどちらかというとできないタイプだ。
とはいえ、教えに沿って罪悪感を持ちながら同時進行をしていた。
その中の1人の話をする。
この人が私をブログ開設への思いを掻き立てた怒りの原動力の源である。
そう、私は今とても怒っているのだ。
マッチングアプリというものは、女性が圧倒的に有利なようだ。
地方であると尚更なような気がする。
マッチングアプリに登録した瞬間にたくさんの人から「いいね！」を貰った。
わ、わからん。多すぎてわからん……
困惑しながらも共通点の多かった3人ほどと連絡をとる。
今回の主役をなるくんとしよう。
同い年の31歳、販売員(某時計屋)
あえて生々しいことを書くが、年収は400～600万円となっていた。
(彼のスペックを鑑みておそらく600万円はないのでは…)
私は顔や年収はある程度でいいと思うし(もちろんお金持ちの男前に越したことはない)、他にもいい条件の方はいたと思う。
しかし、共通点と誠実な自己紹介文、爽やかな写真の印象に「この人いい人そう」と思ったのだ。
いいねありがとうございます、とメッセージを送ると「嬉しいです！😭」と返ってきていた。
まるで犬のようにしっぽを振っているのが見える。
その後もメッセージをやり取りし、LINEの交換もした。
私は「うん」や「そっか」など返しようのないLINEが苦手ですぐ送るのを辞めてしまいラリーが続かないが、彼とは続けることが出来た。
私の話を聞いてくれ、自分の話をしてくれた。
強いて言うなら若干自信家なところがあったと思った。言わば意識高い系だ。そして、美容男子だった。
あまりの力の入れ具合に「私より気を遣ってるかもしれないですね！見習います！」と送ってしまったが「そんな事ないです！今のままで大丈夫ですよ☺️」とサラッと答えた。
ほう、これが一流店の販売員かね、ふむふむ、と期待に胸をふくらませていたある日、食事の誘いを受けたのである。
私の、「本気の時は誰にも言わない」という性質は昔から変わらないらしい。
順調なやり取りに「これは上手くいくのでは」と確信し、周りに相談することなく、連絡を取り合っていた。
なんやかんやで、食事当日。
待ち合わせ場所に現れた彼は上は黒の服(お洒落すぎて名前がわからん)、下はスキニーのダメージデニム、スニーカーはNIKE AIR MAX。
目はぱっちりとしていて普通にかっこよかったと思う。
連れられるまま予約してもらっていたお店へ。
予約を予定日の翌日に入れていたというおっちょこちょいもありながら席に着き、ビールで乾杯する。
まあ、あれだ。これは自分が悪い。勝手に期待している自分が悪いが、マスク姿の方がかっこよかった。多分自分もだと思う。マスクは罪だ。
彼がおすすめだという肝刺しや、もつ鍋、サラダを注文する。
話しながらお酒を飲んでいると徐々になるくんが本性を現してきた。
なる「お店に同世代の人が来て、お腹とか出てるの見て、絶対こんな風にはなりたくないって思うんですよね。だからずっと若くいたい。」
なる「服装には気を遣ってオシャレでいたいんだよね」
私「でも、Tシャツにジーパンとかシンプルな服装が似合う人が1番オシャ」
なる「うん、じゃあ、例えばね、バッグはGUCCIです。上着はヴィトンです。時計はロレックス。それってかっこ悪いと思うんだよね」
私の話を聞いてくれないなるくんはLINEの人とは別人に感じた。私はるんるんしていた気持ちが少しずつ落ち込んでいく。
なる「ゲームとかやらないんですか？」
私「ん～、ムーミンの箱庭で農産物作るくらいですかね（笑）」
なる「へぇ（笑）モンハンやったら彼氏出来ますよ」
私「…はあ。」(？？？)
ほう……、ん？
確信的な違和感を感じた。
どういう意図で聞いているのかとおもっていると、続けてなるくんは話す。
なる「なんで彼氏作らないんですか？ いい声が好きなんですよね？僕の知り合いに37歳でめっちゃいい声の人いるからここに呼びたいくらいです！」
耳を疑った。
彼氏を作ろうとして、アプリして、食事してるのかと思っていたよ。君は違うのかい？
この時点で、きっとこの人は私に興味が無くなったのだろう、と思った。
奇遇だな、私もだ。
その後もスーパー俺様タイムが止まらない。
結論から言うと、自分語り大好きで物凄く失礼なナルシストくんだったのだ。つまり、その「ナルくん」である。
色々話を聞いたが思い返すだけで不快になってくる。
そのいくつかを紹介しようと思う。
なる「香水つけてる？」
私「私は付けないですねぇ」
なる「えっ…(引)、つけないんだ。」
私「今は柔軟剤とかシャンプーとか香りがいいものが多いんで、逆に匂いが混ざりませんか？」
なる「俺つけてる」(嗅がせる)
私 「…いい匂いですね…」(社交辞令)
なる「俺、匂いフェチでさー、生乾き臭とかむりなんだよね」
私 「ああ、いやですね」
なる「部屋干し派？」
私「服とかは外に干したいです」(場所がない)
なる「え？？！！浴室乾燥は？！」
私 「うち、ないんですよね」
なる「えええ？！！！く、臭くならない？！うそ？！俺、外で干したことないからさ、、元カノも浴室乾燥してたから」
私 「コツがあるんですよ」
なる「いや、でもさ～、」
それってあなたの感想ですよね？
私の中のひろゆきが顔を覗かせる。
自分が知っている情報だけが全てで、それ以外は間違いと思っているんだな、と思った。
そりゃ、外に干す人もいるだろ。
なる「部屋にディフューザーとか置いてる？」
私「えぇ、まあ」
なる「どこの？」
私「まあ、色々と、、」
なる「あ、その財布見たことある」
私「多分(ブランド)分からないと思います」
なる「俺のこれ」
私「…はあ、ティファニーですか？」
なる「そう！このステッチが可愛いでしょ！」
ハイブランドを重ねるのがかっこ悪いというが、すぐにブランドを聞いてきていた。
生まれて初めてのブランドマウントをされた。
一流ブランドの販売員だし、ブランドものが好きなのもわかるし、身なりに気をつけないといけないというのはわかるのだけどね。
その蔑んだ目を私は忘れない。
私は本当はstudio CLIPのコットンのディフューザーを置いているが(とてもいい香り！)、馬鹿にされそうなのでお香とかキャンドルとかを置いていると適当に誤魔化し、財布のブランドも言わなかった。
だが、聞いてこないところを見ると、自分のをいいたかっただけに違いなかった。
なる「これからさ、5Gの時代になるじゃん？それってどういうことになるか分かる？お店も仕事も全部AIがやったりしてさ、それは君の仕事にも関わると思うけど。」
なる「車も電気自動車になったり、自動運転になったりさ、人間いらなくなるよ」
私は何を聞かされているんだ。
自分が5Gを生み出したように自信満々に話してくれるが、誰かからの受け売りなんだろうな、よくサシ飲みする50代後半のおっちゃんと同じようなこと言うな、なんて思いながら自分語りを聞いていた。
それを聞いたうえでどう思うのかが聞きたい。
私は少しばかり人の命に関わる仕事であるから、自動運転でも人の命が救われるならそれでもいいと思う。
逆に人間が対応することや、人の手で作られることに付加価値がつき、人間がもっと貴重な存在になる未来もあると思う。
これは当たってるかもしれないし、間違っているかもしれない。
それをああでもない、こうでもない、確かにそれはある！と話すのが好きなのだ。
しかし、彼は「教えたい」人だった。
つくづく価値観が違うと思った。
なる「髭脱毛もやってるし、エステもいってる、東京では日サロもいってた」
私「凄いですね（笑）」
なる「ちゃんと美容液とかつけてる？」
私「そりゃ、まぁ」(私の肌に文句あんのか)
なる「じゃあさ、高い化粧水と安い化粧水、どっちがいいと思う？」
私「安い高いじゃなくて量じゃないですかね」
なる「え、正解！驚」
私「伊達に30年女やってないですから（笑）」
なる「じゃあじゃあ！顔を洗うのはお湯？水？」
私「それはお湯ですけど…(寒い)」
なる「(指パッチン)、それだよ！毛穴が開くから！」
私「まあ、そうでしょうねえ（笑）」
なる「LUSHの○○(忘れた)っていうパック使ってみて！めっちゃしまるから！！」
私「私、LUSH合わないんですよね。じゃあ、私の肌はどうですか？」
なる「まあ、いい方じゃないですか？シミないし。ほうれい線も、あ、ほうれい線はあるか。」
ちょっとどう思う？？？！！！
初対面でこんな失礼な人会ったことなかったからもう驚きが止まらなすぎて「絶対許さない。」って言ってしまった。
聞かれたから本当のこと言っただけなのかな？！
自分がおかしいのかも、とさえ思えてくる。
なにが許せないかって別に彼も肌が綺麗な訳では無いということだ。にきび出来てたし。
美容部員さんのように肌の仕組みから科学的に勉強されてる方に言われたら説得力もあっただろう。
しかし、私でも知っているようなSNSで得たような情報を聞いてもないのにペラペラと喋っているだけのようだった。
そして、もち肌目指してます！とLINEでは送ってきてたが、ごくごく普通の30代男性の肌だった。
なる「右極端でも左極端でもなく、真ん中でいたいんだよね」
私「そうなんですか、、でもなんか、マルチ商法とかハマりそうですね（笑）」
なる「いや、それはない。俺占いとか1番嫌いだから。じゃあ、お前ら自分占えてないじゃん！って思う！」
私「う、占いですか？」
なる「マルチ商法も占いみたいなもんじゃん！」
ちょっと何言ってるか分からない…
信じ込む、みたいなことだろうか？
真ん中でいたいなら「占いはいいことだけ信じる」というかと思ったが、完全に持論で極端の話を覆してくるのは、これはボケなのか？突っ込んだ方がよかったのか？
LINEで会話していた人とは全くの別人だった。
また無駄な数週間を過ごしてしまったと思ったが、反面教師としようと思った。思うしかなかった。
なお、お会計の際、たしか8300円くらいで彼は5000円を出し、私が4000円を出した。
確かに彼は「お釣りは貰って」と言ったが、結局お釣りを受け取ったのは彼だった。
帰りに「ここのフルーツサンドが美味しい」とお店に入り、私はいちごサンド、彼はパイナップルサンドを選んだ。2つで1300円ほど。安いものだ。
これは自分でもよく分からないが、「私1000円だすよ」と言ってなぜか多く払った。
あの日、トータルで私の方が多く払ったと思う。（笑）
奢られることが当たり前とは思ってないが自分が多く支払ったのは面白すぎる。
私が男なら「これくらい僕に出させて」というし、そういう男性にしか出会ったこと無かったから新鮮な体験であった。
まあ、年収を考えれば仕方ないよな、だってブランドものにお金使いたいもんね、と妙に納得しながら21時代に家に着いた。
「ありがとうございました」というLINEを送り眠りについたが、彼からLINEが来たのは翌朝。
「昨日は帰ってすぐ爆睡でした」「次は焼肉行きましょう」と言う言葉に社交辞令を感じつつ、適当に返信を送ってから返事はない。
それと君さ、アプリにログインしてたの見てるから。すぐ爆睡してないね？？？？
世の男性諸君に伝えたい。
デートをして別れる時、「帰ったら連絡してね」という言葉は必須だ。どんなに近くてもだ。
その時言えなくてもLINEで「ちゃんと帰れた？」という気遣いだけで女性は嬉しいものである。
この言葉の偉大さに今更ながら気がついた。
当たり前は当たり前じゃない。
気づかせてくれてありがとう。
もやもやしながら翌日の休みはキヨのProject Makeover のゲーム実況を見ていた。
「美容系のさ、色んなクリームとかあんじゃん？これおすすめです！って言ってきたりするけど、その人に合ってるだけじゃないの？（笑）おすすめだからって誰にでもあうわけじゃなくない？（笑）」と言っていた。
キヨ、その通りだよ。
君なら分かってくれると思っていたよ。
文字では淡々と綴れるが、口では本人に上手く言い返せない。すごく悔しい。あの時ああ言えば良かったとか想いをめぐらせてももやもやは収まらない。そして、想いを成仏させるべくブログを開設した。
私が武田鉄矢だったら「あんたが大将！あんたが大将！大将！大将！」と歌っていただろうなぁ。なんて思いながら、今日もゲーム実況を見ながらハイボールを飲んでいる。
